こんにちは、今回は、資金調達の違いについて書きたいと思います。何か商売をはじめる人や株取引をやっている人には参考になると思います。
最近、起業したばかりのAさんから資金は、親(父親)に出資してもらった。。。と聞きました。うらやましいですね!私は、起業する時に身内から資金を提供してもらえる環境にあるひとは、それが最適解だと思います。仮に資金的に余裕のある身内から出資してもらえない交渉力なら先々の商売も苦労すると思いますし、資金以外にも身近に応援してもらえる人がいるのは心強いです。
Aさんが開業したラーメン屋
私が相談を受けたAさんは、人気ラーメン店の店長を10年以上務めて、その味をベースに独立しました。勤務態度は、とても勤勉でしたが、預金が100万円しかなかったので不足した資金を親(父親)にお願いして提供してもらいました。ラーメン屋開業にかかった費用は、こんな感じです。
- 160万:テナント保証料(家賃20万円×8ヶ月)
- 500万:店舗内装及び什器備品
- 240万:運転資金(材料仕入・家賃・光熱費など)
- 100万:広告費(近隣にビラまき、ネット広告などを6ヶ月程度の計画)
トータル1000万の資金のうち、900万は、親ファインナンスで賄いました。
どのくらいの売上が見込めるか
Aさんの目論見では、次のような売上を計画しました。
- 1,200円:魚介とんこつラーメン
- 240円:サイドメニューでの平均売上をラーメンの20%で設定(餃子・ドリンク・チャーハンなど)
- ▲430円:原価(食材費)を約30%で設定
概ね、粗利1,000円/客ぐらいで、昼食(3時間)と夕食(6時間)の営業時間9時間で100杯のラーメンを売る計画です。1日の限界利益が10万円で、月に25日営業予定なので、月間250万ぐらいの粗利を見込んでいます。
ちょっと待て、それは出資ではないです
Aさんのラーメン屋は、無事スタートし、売上も計画に近い状況で運営できているようで、とてもうれしそうに開業までの話しをしてくれました。よく話しを聞いてみると出資の条件は下記のとおりでした。
- 出資した資金は、10年以内に返してくれたらいい。
- 利益の5%を毎年支払うこと。
この2点のみで、難しいことは約束していない...ということでした。Aさんは、出資してもらったと言っていますが、この条件は、世間で言われる出資ではないですね。しかも、厳しめの条件じゃないでしょうか。。。
ポイント1:10年以内に返すのは、出資ではない
私が聞いていて、モヤッと感じたところが10年以内に返すという約束ですが、これは、貸金であって、一般的な出資ではないですね。一般的には出資を募って商売(今回はラーメン屋)をする場合、出資比率に比例した株式を割当します。さらに買戻権などを使った株式割当以外は、そもそも出資した資金は有限責任の原則に従って、事業が失敗すればゼロになり、成功すると保有する株を他人に売却したりします。つまり、出資なのに返済が必要な資金は、借入金で銀行から借りるか親から借りるかの違い程度です。
ポイント2:利益の5%を毎年払う・・・これは配当!?
利益の一部を払うという部分でピンッときました。資金提供してくれた親(父親)は、この部分に関しては出資のイメージのようです。利益の5%なので、利益がない場合は支払いませんし、仮に1億の利益なら、500万支払うという意味なので、これは出資になるかと思います。
結局、よくわからない同士で走り始めた融資と出資(投資)のハイブリッド資金提供
お互い仕組みがよくわかっていないままスタートしているので、Aさんからすれば、借入なので10年以内に返す必要がありますし、ラーメン屋が順調に成長すると資金を提供した人は、返さなくていいので利益の5%をずっと支払ってほしいと思いますよね?良好な関係が続いていれば問題なさそうですが、資金提供した人に相続が起きて当人同士でなくなった場合などは悲惨な結末が待っています。
この出資に関する取り決めでの問題点
それでは、この出資に関して、どのような取り決めをすれば良かったか考えてみます。
まずは、出資か借入をハッキリ決める
Aさんは、借入したいのか、出資してほしいのかハッキリ決めて親(父親)に説明すべきだったと思います。
出資の場合
前提として法人にした方がスムーズです。株式会社は、このような複数の出資者がいる場合の取り決め(フレームワークみたいなもの)が既にあるので、その取り決めと違う約束をした部分だけ定款で変更すればOKです。※会社法上、強行規定もあり
- 資金の返済はしない
- 出資比率で配当はできる
- 出資した資金部分の権利は、第三者にも売却も可能
会社法上の規定で、配当の割合を変更して種類株式を発行したり、第三者に売却する前に会社が買取請求権に従って買う権利を設定することも可能です。詳しくは、司法書士に確認してください。
借入の場合
これは、決められた期限までに返済(利息があれば利息も)をすれば、特に問題になりません。さらに会社の持分も関係ないので、個人事業ではじめても複雑になりません。法人にするかは、商売の規模や税率の優位性などで決めれば良いと思います。借入の場合は、利益の5%ではなく借入金の5%にした方がトラブルがないと思います。知り合いから借入が難しい場合は、日本政策金融公庫という政府系の金融機関があります。起業を応援している組織なので、相談して損はないですよ。私も起業当初に民間の金融機関が相手をしてくれない時代に融資をしていただきました。感謝していますm(_ _)m
利益の5%を利息相当とすることも可能だが...
借入金の利息を利益の5%で約定することは、可能ですが透明性のある契約になるか微妙です。特に個人事業の場合は、利益額はAさんのお手盛りで操作可能ですし、法人の場合は、お金を貸した人は債権者ですが、株主ではないので利益額をコントロールできる立場にはないので、思った通りの利息相当額を得られることが難しいと思います。
出資か融資か基本的な結論
出資の場合は、会社の権利を出資割合で差し出す代わりに資金提供を受けます。全てAさんが自由に経営したい場合は、避けたい選択肢です。
融資の場合は、Aさんが全て自由に経営できますが、事業に失敗しても返済義務は残ります。1.資金返済が必要か。2.会社の権利を分けるか。この2つが大きな決定要因です。
資金も必要な大規模な事業の場合
鉄道事業をはじめるぞ!って思った場合、1000億円の資金が必要だとします。10億の資金を100人から集めれば、必要な資金をクリアして事業を開始できます。無論、成功した場合も、株主としての権利はゼロです。資本と経営が分離された大企業の仕組みがコレにあたります。
オーナー起業の場合
Aさん例で言うと1000万の貯金を元にラーメン屋をはじめる場合は、オーナー=経営者ということになるので、利益も事業の権利も100%Aさんのモノになります。仮に大成功してラーメン屋を株式公開して上場する場合は、すべてAさんのモノになります。
このように出資と融資は全くことなるので、「君の事業(お店)にお金を出すよ」なんて甘い言葉をかけてくれる人がいたら、「ありがとうございます」と言った後に出資か融資か、確認して細かい条件を詰めましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。それではまた!